090830 断熱材と遮音材
 
音の世界の断熱と遮音では(空気を含めて)同じ材料を使うことが
しばしばあります。

しかし、遮音と断熱では目的が違いますので、同じ材料でも使い方が
違ってきます。その辺りを今後ご説明させていただきたいと思ってい
ます。
 

100520 遮音ルームは断熱性がよいので省エネ?
引用が少し長くなりますが、「住まいと音(岡山好直)」(音楽之友社 1983年)には
2重構造(外壁と内壁の間隔は約200mmでグラスウールで充填されている)の音楽
室の効用として、

「冬は暖房を意識せず、ただ『春の中に居る』という感じ。また夏は冷房を意識させ
ることなく、ただ『秋の中に居る』という感じである。」

「この室は、また『省エネ室』である。但し『何かをやらないのが省エネ』などという
知恵のない発想とは無縁であって、冷房も暖房も電気も使い、(中略) 電気の
使用量は同じ機器を一般の建物で使った場合の三分の一以下である。
もちろんいわゆる『断熱建築』以上の断熱性のたまもので、その断熱性はマトモな
遮音構造の副産物なのだ。」

と記述されています。

この音楽室について解説をしますと、

1 断熱性を上げるためには、空気層が重要ですが、断熱性の向上の観点からは
  その空気層内の空気が流動し難いことが必要です。
  従って、何も充填しない場合は薄い空気層がよいわけです。
  上記の音楽室の場合、空気層が約200mmと厚いのですが、グラスウールが
  充填されているために中の空気は流動し難く、断熱上うまくいったわけです。

2 2重構造の、例えば内壁はC種ブロックのモルタル仕上げとなっており、これは
  ある程度の熱容量を持っています。
  室内の内部発熱は照明(蛍光灯)と人体くらいですので、適度な室内熱容量と
  相まって、穏やかな室内環境が実現されたと考えられます。

それでは、一般的に遮音ルームは断熱性が良く省エネである、と言えるかどうか
です。結論から言えば、「そうなる場合もある」ということになります。

どのような場合にそうならないのか? 例を挙げてみます。

1 まず、オーディオルームのように内部発熱量が多い場合です(パソコンからの
  発熱量もかなりのものです)。
  この場合、内部発熱を空調機で室外へ逃がしてやらなければなりません。

2 次に、部屋のサイズに対して相対的に多くの人が室内にいる場合です。
  人体発熱(顕熱・潜熱合わせて約85Kcal/h/人)もさることながら、相当量の換気
  が必要になり、夏季・冬季にはそれぞれ冷房負荷・暖房負荷が発生します。

そもそも、遮音性を上げることと断熱性を上げることでは手法が違います。

例えば、低い周波数(125Hz)で室内の吸音率を上げるためには吸音材の背後に
300mm程度の空気層を設けることは極めて有効ですが、断熱性の向上という観点
からは決して妥当な方法ではありません。

逆に、断熱性が良いからといって遮音性が良いとは限りません。
典型的な例は2重ガラスです。2重ガラスの断熱性は高いのですが、遮音性はあま
り高くありません。2重ガラスではなく2重窓にして、間に空気層をたっぷりとった方
が遮音性ははるかに向上します。

このように、遮音と断熱では重なる部分もありますが、決して「イコール」ということで
はありません。
 

 
   
 


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